この記事では「ファインディング・ニモ」及び「ファインディング・ドリー」のメインキャラクターとして登場する海水魚、ナンヨウハギのドリーの種類、生態や値段、飼育方法について解説していきます。
実際に水槽を立ち上げてからナンヨウハギを飼育するまでをまとめた記事はこちら↓
ナンヨウハギを飼育してみたいという方がこの記事を読み終わった後に読むのにおすすめです。
ナンヨウハギとは
「ドリー」でおなじみのナンヨウハギは、魚の種類としてはニザダイ科に分類される海水魚です。濃い青の体色をベースに、独特な黒い模様と黄色い尾鰭が特徴的です。
この種類の他のニザダイと同じく、成長すると体長30cmに達するものもいるので、観賞用の海水魚としては中型~大型魚に分類される海水魚です。ただし、映画で登場するドリーのように、幼魚は4~8cm程度であり、このサイズでしたら小型の水槽でも飼育することができ、また実際にショップなどで出回るのはこのサイズが主流となります。
鮮やかな体色でもともと人気のある種類の海水魚でしたが、映画「ファインディング・ニモ」の影響もあり、今ではカクレクマノミに並ぶ大人気の観賞魚となりました。
更に、今年は映画の続編である「ファインディング・ドリー」が公開されるのでナンヨウハギ人気は更に加速することになりそうです。
同じく人気の海水魚であるカクレクマノミについては以下の記事でまとめてあります。
ナンヨウハギの生態
ナンヨウハギは世界中の熱帯海域に広く分布し、日本でも南の方で分布が確認されています。
ナンヨウハギは主にサンゴ礁域に生息していて、自然界では大きな群れを形成して生活しています。幼魚はサンゴの周辺に群れて泳ぎ、外敵が近づくとサンゴの隙間に隠れる性質があります。これは水槽環境でも似たような現象が確認でき、人が近づいたりすると岩の隙間に隠れたりします。
体構造の特徴として、尾びれの根元に鋭いトゲのようなものを隠し持っていて、緊急時はこのトゲをむき出しにして戦います。英名のサージョンフィッシュ(外科医の魚の意)はこのトゲに由来するものです。
餌は主に動物プランクトンを捕食しますが、この種類の他のニザダイと同じく、草食性が強く、海藻類もよく食べ、飼育環境下では植物性の強い餌や海藻、葉菜類などをよく与えた方が状態が良くなることが多いです。
水族館ではレタスなどの野菜を与えているところもあるようです。
ナンヨウハギの飼育に関する注意点
さて、ナンヨウハギの生態についてざっと目を通しましたので、続いてナンヨウハギを飼育する上でのポイントを見ていきます。
ナンヨウハギの飼育に関して注意すべきポイントは4つあります。
まず、大きさに関する問題、次に性格に関する問題、食性に関する問題、最後に病気に関する問題です。
大きさに関する注意点
前述した通り、ナンヨウハギは成魚になると30cmにもなる、観賞魚としては比較的大型な海水魚です。
しかし、映画に登場するドリーのように、ショップで出回るサイズは上の写真のような4~8cmと小型の幼魚サイズですので、なかなか成魚のサイズ感を知ることができないのが現状です。
ショップで買ってきた幼魚をそのまま飼育できれば何も問題無いのですが、実際はそうはいきません。
ナンヨウハギの飼育で問題になるのが、その成長のスピードです。
ナンヨウハギは観賞魚の中ではトップクラスに成長のスピードが速く、幼魚なら半年で数倍の大きさになることも珍しくありません。
加えてナンヨウハギは同じ種類の他のハギ類同様、よく泳ぎ回る魚ですので普通の海水魚以上にスペースを必要とする海水魚です。
これらのことから、ナンヨウハギを小型水槽、特に60cm未満の水槽での飼育することはあまりお勧めできません。もちろん、飼育できることにはできます。成長に関しても、魚は周囲の環境に合わせて自分の成長を調整しますので、小型水槽で飼育した場合、成長スピードは遅くなります。
しかし、このように狭い環境で育てられたナンヨウハギは自由に泳ぎ回れずストレスが溜まり、体色なども悪くなりがちになってしまいます。
人間でも狭いカプセルホテルなどでずっと生活していればストレスが溜まるのと同じことです。
ですのでナンヨウハギを飼育する場合、最低でも60cm水槽、できれば90cm以上の水槽を用意することを推奨します。
たしかに幼魚のうちのナンヨウハギは映画のドリーのようでとても可愛いですが、実際にこの一番可愛いナンヨウハギを飼育できる時間はそう長くないということを知っておきましょう。
性格に関する注意点
ナンヨウハギは自然環境下では群れを作って生活しており、危険を察知するとサンゴの隙間に隠れてしまうなど、どちらかというと温和で臆病な性格の魚です。
しかし水槽環境下では、ナンヨウハギは気が強くなる傾向にあるようです。
特に、水槽内で一番大きい魚がナンヨウハギだった場合などは、水槽内のボスとなることが多いみたいです。ナンヨウハギの成長が早いことと合わせて、ナンヨウハギは水槽のボスになりやすい傾向があります。
水槽のボスになった場合どうなるかというと、最悪の場合、似たような体形、似たような体色の魚と喧嘩をする恐れがあります。
しかしもともとそこまで凶暴な魚ではないため、喧嘩相手を殺してしまうなどといった深刻な問題になることは少ないようです。
ですが、少なくとも水槽環境下ではカースト上位になりがちな魚だということは覚えておくべきです。
ナンヨウハギをカースト上位にしたくない場合などは、ナンヨウハギを最後に加えるなどの対策が必要となります。
食性に関する注意点
ナンヨウハギは自然界では動物プランクトンを捕食していますが、水槽内でそれを再現するのはほぼ不可能ですので、他の餌を与える必要があります。
ナンヨウハギは草食性が強く、自然環境下では海藻をよく食べるそうで、水槽環境下でもライブロックに付着している海藻類をつついているのをよく見ます。
しかし、生きた海藻をコンスタントに供給することは現実的ではないので実際には人工餌での飼育となるでしょう。この場合、植物性の強い人工餌を与えることで良い結果となることが多いようです。
下の海藻70という人工餌は定番の植物性人工飼料で、ハギ類がとても好んで食べるのでナンヨウハギを飼育するのでしたら持っておきたい人工餌です。
また、定期的に生きた海藻や海苔などを与えることも状態向上に繋がります。
と一通り定説を説明しましたが、実際にはナンヨウハギは食に対しては非常に貪欲で、基本的にはどんな餌でもバクバク食べる魚ですので、そこまで構える必要は無いのかもしれません。
病気に関する問題
近い種類のハギ(ニザダイ)類全般にも言えることですが、ナンヨウハギは白点病という病気になりやすいと言われています。
白点病は、白点虫と呼ばれる寄生虫が海水魚の体表に寄生し、体力を奪うことで最悪の場合死に至る病気なのですが、ハギ類の肌が他の海水魚に比べてデリケートなのか、諸説ありますがとにかくハギ類は白点病にかかりやすいというのが定説です。
白点虫は水槽内に100パーセント必ず存在しています。海水魚の体表についてきたり、ライブロックについてきたりと、白点虫の水槽への侵入を避けることは不可能だと思っていいです。
ただ、この白点虫が海水魚に寄生するかどうかは、その魚次第です。魚の体力が落ちた時を狙って白点虫は海水魚に寄生します。人間でいう風邪みたいなものだと思ってください。
ですので、白点虫に寄生されやすいハギの飼育に関しては、とにかくストレスを与えない、体力を落とさせない、ということが大事です。
具体的にはナンヨウハギを水槽に導入するときは、十分にろ過が成熟した水槽に入れることや、水合わせをしっかり行うことなどを徹底しましょう。
また、無理な混泳をさせないことや、餌をよく与えて体力を付けさせることも大事なポイントだと言えます。
特に初心者の方では焦ってまだ十分に立ち上がっていない水槽にナンヨウハギを入れてしまい、白点病にさせてしまうことがよくありますので注意が必要です。
ナンヨウハギは病気に関しては若干デリケートな魚であることを知っておきましょう。
ナンヨウハギの飼育方法と必要なもの、予算
ナンヨウハギについてひと通り知識を付けたところで、実際にナンヨウハギを飼育するにはどうすればいいのか、見ていきます。
ナンヨウハギの飼育
ドリーことナンヨウハギは、前述したポイントにさえ気をつければそこまで飼育が難しい種類の海水魚ではありません。
餌も良く食べ、良く成長してくれるなど、性格的には金魚に似ていると言ってもいいくらいです。
ただし、やはりそうは言ってもナンヨウハギは金魚とは違い海水魚ですので、飼育には水道水に専用の塩を溶かしてつくる人工海水が必要だったり、自然の海の環境を再現する為にサンゴ砂やサンゴ岩が必要だったりと、金魚を飼育するのとはかなり異なった飼育方法をしなくてはいけません。
このあたりはナンヨウハギでない海水魚を飼育する時にも言える事ですね。
必要なものさえ揃えてしまえば、あとは毎日餌を与えて、たまに水換えをするなど、金魚などの淡水魚を飼育するのと同じように飼育をする事ができます。
ですのでナンヨウハギを飼育する上で大切な事は、海水魚の飼育方法を良く調べ十分理解し、それに必要なものを揃えることだと言えます。
ナンヨウハギ、もっと広く言うと海水魚の飼育は、実はそこまで難しくありません。ただ、その飼育方法が若干複雑だったり、飼育に必要なものが多かったりするので、十分な下調べと前準備をしないと失敗してしまいます。
お祭りで持ち帰った金魚を飼育するような即席での飼育はとてもじゃないですが海水魚ではできません。
ですのでナンヨウハギを飼育したいと考えている方は、飼育方法、飼育に必要なものなどをしっかりと下調べをする事を推奨します。
もちろんこのブログでも飼育方法を解説していますし、他のサイトや書籍などでもいいですが、とにかく入念な前準備を怠らないようにしましょう。
飼育に必要なもの、予算
ナンヨウハギは、基本的には一般の海水魚が飼育できる設備があれば飼育が可能です。具体的には、水槽やろ過装置、照明といった、観賞魚を飼育する際に必ず必要になるものです。
前述したサイズの問題や病気の問題がありますので、水槽サイズはできる限り大きいサイズで、またろ過に関してもできる限り強力なろ過を、可能ならばベルリンシステム式ろ過で飼育すると病気を気にせず健康に飼育ができると思います。
ナンヨウハギやその他の海水魚の飼育に必要な具体的なものは以下の記事でまとめてありますので、初めて海水魚を飼育する方は是非読んでみてください。
なお当記事では具体的な飼育用品に関する紹介は省かせて頂きます。
また、ナンヨウハギを飼育する際に必要となるろ過の仕組み、ベルリンシステム式ろ過については以下の記事でまとめてあります。
特に飼育が初めての方は、上記の2つの記事は熟読しておくことをおすすめします。
ナンヨウハギを飼育する予算としては、60cm水槽なら3~4万円、90cm水槽でしたら6万円~必要になってきます。
ナンヨウハギ自体は2~4000円程度ですがやはりどうしても機材分、初期投資が必要になってしまいます。
ナンヨウハギを飼育するのでしたらぎりぎりのサイズですが、海水魚の飼育が初めての方には60cm水槽での飼育をおすすめしています。
また、実際にナンヨウハギを飼育するために、60cm水槽を立ち上げ、それを記事にまとめましたので、実際の具体的な飼育方法を知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
ナンヨウハギの選び方
前述した通り、ナンヨウハギは非常に成長の早い海水魚ですので、成長を見越して購入するサイズを決めましょう。
60cm水槽なら8cm程度までの個体、90cm水槽なら12cm程度の個体までに留めておきます。
また、幼魚の中でも2~3cmの豆粒サイズのナンヨウハギは非常に可愛く、値段も手ごろなので手を出してしまいがちですが、このサイズのナンヨウハギは非常にデリケートで痩せやすく、飼育難易度は高めですので初心者の方は5cm以上の個体を選ぶことをおすすめします。
バリ産ナンヨウハギ(Mサイズ)
海水魚通販大手のチャームが販売しているナンヨウハギです。
サイズも4~7cmと、小さすぎず大きすぎずベストサイズと言えます。
60cm水槽にも90cm水槽にもおすすめのサイズです。
まとめ
ドリーことナンヨウハギの生態、飼育方法について解説しましたがいかがでしたか?
ナンヨウハギは何でも良く食べる丈夫な海水魚ですが、若干病気にかかりやすいことや、大き目の水槽を用意する必要があることから、同様に人気で飼育しやすい海水魚のカクレクマノミに比べると少し飼育難易度は上がってしまいます。
ですがしっかりと知識を付け、機材を揃えればそこまで飼育が難しい海水魚ではありませんので、初心者の方がナンヨウハギを飼育しようと思ったら、しっかりとした事前の情報収集と、惜しまない機材投資が成功への近道であると言えます。
今年は映画「ファインディング・ドリー」の公開がありますのでナンヨウハギの人気は更に高くなると予想されます。また、この機会に新たにマリンアクアリウムを始める方も多いのではと思います。
これをきっかけにマリンアクアリウムが更にメジャーな趣味になればと思います。
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