海水魚を飼育するにあたって、餌は必ず必要になるものです。
餌とひとくちに言っても、乾燥フード、冷凍餌、生餌など多くの種類があり、また、どのような素材(肉食系向けか、草食系向けかなど)を使っているかの違いもあり、実に様々なタイプの餌があります。
また、海水魚用の餌を販売しているメーカーも多く、どれを選べばよいのか迷ってしまうと思います。
この記事では、海水魚飼育で使用される餌について、その種類や違い、おすすめの餌について解説していきます。
餌の種類
海水魚に与える餌としては、大きく分けて3種類あります。
乾燥フード、冷凍餌、生餌 の3種類です。
それぞれ違った特徴があるので解説していきます。
乾燥フード
1つ目は、乾燥フードタイプの餌です。人工餌、乾燥フード、人工フードなどとも呼ばれます。
これは、魚肉やイカ、エビ、海藻類などをブレンドし、乾燥して魚の食べやすいサイズにしたものです。
一般に、観賞魚の餌と言われて思いつくのがこのタイプの餌だと思います。観賞魚を飼育される際に使われる餌のタイプとしては最もポピュラーで、9割以上のアクアリウムユーザーの方はこのタイプの餌を使用しているかと思われます。
これだけ使用されている理由は、やはりそのお手軽さからだと思われます。
安くて保存もしやすく、与える手間もほとんど無いので、毎日与える必要があることを考えると、このお手軽さは捨てがたいです。
上記画像のような顆粒タイプのものと、薄い板状、ちょうど桜の花びらくらいの大きさに加工されたフレークタイプのものがあります。
顆粒タイプのものは時間が経つと沈んでいくものが多く、逆にフレークタイプは長い時間水面に留まっているものが多いです。
また、商品によっては小型魚向け、または大型魚向けに粒やフレークのサイズが小さかったり大きかったりするものもあります。
この形状や大きさの違いにより、様々な魚に対応することができることも人気の理由の1つです。
ちょっと変わった乾燥フードとしては、クリルと呼ばれる、小型のエビをそのまま乾燥させたものもよく使用されます。
甲殻類を好む海水魚に与えると良く食べてくれます。
また、草食性の海水魚用の、海藻の配合率を高めた乾燥フードなどもあり、こういった飼育する海水魚の食性に合わせて選べるところも乾燥フードの利点と言えます。
また、乾燥フードのもうひとつの大きな利点は、水を汚しにくいという点です。
腐るような成分が少なく、また消化吸収されやすいようにつくられているので、水質の悪化に繋がりにくいです。
これは水質の悪化に極めて弱いサンゴを飼育する事もあるマリンアクアリウムでは、非常に強みとなる利点だと言えます。
乾燥フードのデメリットとしては、どうしても栄養が偏ってしまうということが挙げられます。
自然の海には海水魚の餌となるものがあまりに豊富で、天然の海水魚はこういった環境で様々なものを食べています。
これを人工的に作られた餌で完璧に再現するのは不可能で、どうしても足りない成分、多すぎる成分などが出てきてしまいます。
これは人間でも同じことが言え、簡単に栄養を摂取できるゼリー飲料やサプリメントなどはありますが、これだけで生活していると必ずいつか体のどこかがおかしくなってしまうでしょう。
米に野菜や肉、魚など、ナチュラルなものをバランス良く摂取する事で健康的に生活する事ができるのです。
とはいえ、観賞魚用の乾燥フードは非常に完成度が高く、魚が必要とする栄養のほぼ100%をこれでまかなえると言っても過言ではありません。
実際、海水魚の養殖にもこういった乾燥フードが使用されることもあるほどです。
また、飼育している海水魚は、水槽内で発生するプランクトンなどのナチュラルなものを多少なりとも摂取しているので、100%人工飼料のみで生きている訳ではありません。
これらの事から、実質的に、海水魚は乾燥フードのみでも飼育は十分可能です。
ただ、どうしても栄養面では後述する冷凍餌や生餌には劣ってしまうと言う事は知っておきましょう。
また、もうひとつのデメリットとして、餌付けをする必要がある場合があるという点が挙げられます。
乾燥フードは海水魚が普段食べているような素材から作られているので、多くの海水魚は特に問題なくこれを食べ物だと認識して食べてくれます。
ですが一部の警戒心の強い海水魚は、普段食べているものとは明らかに違った様相を呈す人工飼料を、餌として認識してくれません。
特にチョウチョウオ、一部のヤッコ、ハナダイなどがこういった海水魚の代表だと言えます。
こういった海水魚を飼育する場合は、徐々に人工飼料に慣らしていく、餌付けをしなければいけません。
餌付けの方法としては、生や冷凍の餌を与えるところから初め、少しずつ乾燥フードを混ぜていくといったやり方などがありますが、詳しく書くと長くなりすぎてしまうのでここでは割愛します。
ともかく、人工飼料をはじめから食べてくれない海水魚がいる、ということは知っておきましょう。
冷凍餌
天然素材である小型のエビやプランクトンなどを冷凍させたものです。
海水魚の飼育では、主にブラインシュリンプ、ホワイトシュリンプ(イサザアミ)、コペポーダ、ワムシなどが使用されます。
冷凍餌は、普段海水魚が食べているものを素材としているので、ほとんどの海水魚が喜んで食べてくれます。
また、栄養価も高く、それでいて冷凍フードなので保存もしやすいというのもメリットとして挙げられます。
デメリットとしては、冷凍してあるので、与える前に解凍する手間がかかることと、冷凍とはいえ解凍すれば生餌と変わらないのでかなり水を汚してしまうという点が挙げられます。
以上のことから、飼育のメインに使用するのは難しく、人工フードに餌付いていない海水魚を餌付ける際に使用したり、栄養面の補助として週や月に数回与えるといった使い方をするのが主となります。
特にチョウチョウオやハナダイ、一部のヤッコを飼育する際には餌付け用のフードとして必要になってきますので、こういった海水魚を飼育するのなら必ず持っておきたい餌だと言えます。
生餌
生餌は大きく分けて2種類あり、魚やイカの刺身やアサリなど、冷蔵保存する生(なま)の餌と、ブラインシュリンプやイサザアミなどの、実際に生きている生(いき)餌があります。
魚やイカの刺身は、ウツボだったりサメだったりといった肉食系の海水魚を飼育する際に使用されます。
こういった海水魚を飼育しないのであれば無縁の餌です。
アサリはチョウチョウオやヤッコの餌付けの際に使用されることがあります。
これらの餌は非常に水が汚れやすい為、通常の水換えでは追いつかなくなる事がありますので使用する際には注意が必要です。
後者は、前述した冷凍餌の冷凍していないバージョンだと思ってください。実際に自然界の海水魚が食べている小型の甲殻類です。
これらの餌を使用する利点としては、実際に自然界で食べているそのものですので、ほとんどの海水魚が狂ったように喜んで食べてくれるところです。
生きている鮮度の高いものですので栄養価も高く、餌としてこれ以上のものは無いと言っても良いでしょう。
ただ、デメリットとして調達、保存が非常に面倒という点が挙げられます。
ブラインシュリンプは、ブラインシュリンプエッグという超小型の卵を自分で孵化させる必要があり、これが非常に面倒な為、毎日与える必要がある餌やりにおいて、これをメインにするのはあまり現実的ではありません。
イサザアミは汽水に生息するエビで、ショップで購入する事はできますが、汽水の、低温度(20度以下)に生息しているという性質から、維持が非常に困難で、長く保存できる餌ではありません。購入して数日以内に使用する使いきりの餌だと思ってください。
ブラインシュリンプ、イサザアミ共に冷凍餌として売られているものの方が入手、維持どちらの観点から見ても優れていて、解凍してしまえば生きているか死んでいるかの違いくらいしかありませんので、ほとんどの場合冷凍のもので事足ります。
よってこれらの餌は日常的に使用する餌としてではなく、栄養補給やおやつとしてたまに与えてもいいかな程度のものだと思っていいでしょう。
ただし、冷凍餌ですら食べてくれない海水魚(一部のチョウチョウオやヤッコ、タツノオトシゴなど)の飼育においてはこの生き餌以外の選択肢が無く、やむなくこれらの餌を与えなくてはならないという場合もあります。
餌の種類まとめ
3種類の餌の特徴・違いについて知ることができましたか?
まとめとしては、基本的には乾燥フードを使用し、乾燥フードは飼育する魚の食性や大きさによって与えるものを決めます。
そして、栄養面のケアとして冷凍餌や生餌をたまに与えるとより健康的に育てる事ができるでしょう。
また、乾燥フードに餌付かない場合は、適宜冷凍餌や生餌を使用し、徐々に乾燥フードに近づけていきます。
乾燥フードはサイズや成分の異なるものを2~3種類持っておくと様々な海水魚に対応できるのでおすすめです。
おすすめの海水魚飼育用の餌一覧
筆者おすすめの海水魚飼育用の餌を一覧にしました。
多くの方がメインで使うことになるであろう、小型海水魚用の乾燥フードが中心です。
冷凍餌、生餌に関しては割愛させていただきます。
メガバイト レッドS
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観賞魚用のフードメーカーとしては世界レベルで有名なキョーリンが発売している海水魚用の乾燥フードです。
生菌剤配合で、魚の健康向上を謳ったプロバイオティクスフードです。
小さめの顆粒タイプなので、~8cm程度までの小型魚におすすめのサイズです。
クマノミやスズメダイなどには特におすすめのフードです。
筆者は10年近くこのフードを愛用しています。理由としては、昔、とある別の餌からこの餌に変えた際に、明らかに今までと魚の食いつきが違って驚いた経験があるからです。
また、信頼できる世界のキョーリン製というのも大きなポイントですね。
どの餌を使えばいいのか迷ってしまうという方は、これを選んでおけば間違いないと自信を持っておすすめできる乾燥フードです。
ただ、他の乾燥フードに比べて若干高価なことと、中身が若干取り出しにくいことがネックです。
キョーリンさん、そろそろ付属のスプーンの長さをどうにかしてください笑
もう少し粒の大きいMサイズ もあります。
メガバイト グリーンS
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上記メガバイトのグリーンバージョンです。
こちらはレッドに比べて海藻などの植物性の素材を多く配合した、草食性海水魚向けのフードとなっています。
ナンヨウハギやヤッコなどを飼育する場合、メインの餌として是非持っておきたいフードです。
また、その他の海水魚にも、栄養のバランスを整えるという意味で、他のフードと混ぜて与えるのも有用です。
こちらもMサイズ もありますので飼育する海水魚のサイズに合わせて選んでください。
海藻70
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またまたキョーリンから、植物食性の海水魚に特化した乾燥フードです。
なんと成分の70%以上が海藻であるという商品名通りの餌です。
特にハギ、ヤッコにおすすめです。ハギは狂ったように食べますよ笑
他の海水魚も普通に食べるので、普段与えている餌に、栄養バランスの補完という意味で混ぜて与えるのにもおすすめです。
こちらも筆者イチオシのフードです。ハギ、ヤッコを飼育している方は是非!
シュアーS
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パッケージのお魚が可愛いこちらの乾燥フードは、養殖用のフードも開発しているマリンテック製です。
あらゆる小型海水魚に対応した万能で汎用性の高い乾燥フードだと言えます。
メガバイトとはお好みで選べばいいと思います。こちらの方が若干安値で、消費期限も長いという話も聞くのでコスパで選ぶならこちらかなと思います。
テトラ マリンフレーク
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観賞魚の用品メーカーとして非常に有名なテトラの販売する海水魚用フレークフードです。
フレークフードは長い時間水面に漂っているので、残り餌が出にくい特徴があります。
逆に言うと下層の魚に行き届きにくいので、こういう魚を飼育する場合は沈みやすい顆粒フードと混ぜて与える事であらゆる層の魚に餌が行き届きます。
フレークフードは何かと便利なのでひとつ持っておくといいでしょう。
テトラ マリングラニュール
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こちらもテトラより、顆粒タイプのフードです。
筆者が使用したことのある乾燥フードの中では最も早く沈む餌だと思います。
ですので、主に中層~下層の魚に与える餌としておすすめです。
スズメダイやハナダイなど速く泳ぐ魚が多いと、普通の顆粒タイプのものでは下層まで餌が行き届かない場合もあるので、持っておくと役立つかもしれません。
ただ、若干粒が硬めなので魚によっては好みが分かれるかもしれません。
オメガワン マイクロペレット マリーン
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海水魚用品では人工海水のインスタントオーシャンが有名なナプコから顆粒タイプの乾燥フードです。
顆粒タイプですが結構長い時間浮いている印象です。
魚の免疫力向上に繋がる不飽和脂肪酸を配合しています。
また、ガーリックを多く配合しているので匂いが強く、多くの魚がよく食いつきます。
また、他の乾燥フードに比べて値段が安く、非常にコスパが優れています。
容器もメガバイトに比べて毎日使うには使いやすく、あまりメジャーではありませんが筆者イチオシの万能乾燥フードです。
ただプラスチック容器なのが若干気になりますね。メガバイトやシュアーは金属製容器なので、もしかしたら保存期間に差があるのかもしれません。
なので短期間でたくさん消費できる、多くの海水魚を飼育している方に特におすすめだと言えます。
テトラ クリルマリン
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テトラより、オキアミを乾燥させたクリルです。
主に中~大型魚の主食や、潰して与えれば小型魚もよく食べてくれます。
特にロイヤルグラマやゴンベなどの甲殻類を好む魚は飛びついて食べますので、こういった海水魚を飼育している場合は持っておくべきです。
筆者はこれをロイヤルグラマに与えていたら、そのうち手から食べてくれるようになりました。また、ヤッコも手から食べるようになるそうです。
顆粒やフレークとは違って、こういった与える楽しみもあります。
まとめ
各餌の特徴や違い、おすすめのフードについて知ることができましたか?
チャームに出品されていなかったのでリンクはありませんが、デルマリンフードなども使っていて良い餌だと思いました。
あとはショップオリジナルのフードだったり、養殖魚用のおとひめなんてのも使いましたがどれもよく食べてくれました。
おすすめのフードに関しては人気の何種類かの餌をピックアップしてみましたが、実際のところどれが良いのかは魚に聞いてみないとわからないので、正直好みで選んでもいいと思います。
ショップで使っている餌を選べば、そのショップで購入した魚はその餌を食べてくれる確率が高いので、そういった選び方もありだと思います。
もし他におすすめのフードがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。