この記事では、特に海水魚の飼育を始めようと思っている、また、始めたばかりの飼育初心者の方におすすめの海水魚を紹介していきます。
今回は、その中でも飼育が容易で色鮮やか、可愛らしい独自の動きが人気の小型ヤッコを紹介します。
小型ヤッコとは?
マリンアクアリウムにおける小型ヤッコとは、普通、キンチャクダイ科に属するヤッコの中でも、アブラヤッコ属に属するヤッコの事を言います。
(シマヤッコ属に属するシマヤッコも小型ヤッコとする場合が多いですが、飼育難易度が非常に高く、様々な点でアブラヤッコ属のヤッコとは性格が異なりますので、今回は対象外とします。また、アブラヤッコ属でないヤッコでも、10cm以下の幼魚を小型ヤッコとする場合もありますが、今回は対象外とします。)
アブラヤッコ属に属するヤッコはほとんどが全長10cmに満たない小型種で、鮮やかな体色とタフな性格、小型水槽でも飼育が可能なサイズ感など、様々な理由で人気があります。
自然界ではサンゴ礁付近の岩場に生息していて、常に移動しながら岩に付着している海藻や微生物などを突いて食べています。これは水槽内でも同様で、ライブロックの間をすいすい泳ぎながら、舐めるようにライブロックを突く仕草がとても可愛らしいです。
小型ヤッコの多くは餌付けの心配が無く、丈夫な種なので飼育難易度としては低めで、飼育初心者にもおすすめできます。
ただし注意すべき点もあり、同種や近縁種との混泳では問題が起こる場合がある点と、サンゴを食べてしまう可能性がある点です。
小型ヤッコ飼育で注意すべき点
小型ヤッコを含むキンチャクダイ科の多くに言えることですが、小型ヤッコは非常に縄張り意識が強く、自分の縄張りに同種、もしくは近縁種が近づくのをとても嫌います。狭い水槽内で小型ヤッコを複数匹飼育した場合、ほとんどの場合、縄張り争いが起こります。
多くの場合は体の大きい個体が勝ち、負けた個体は勝った個体と目が合うたびに追い回されることになります。
また、大きさが同程度だった場合や、相性が良かった場合などは喧嘩せずに、もしくは多少の小競り合いがあるくらいで共存することもありますが、全く争わないのは稀なケースだと思ってください。
死に至るまで追い回すようなことは少ないですが、小型ヤッコの複数飼育では小競り合いが起こるのは覚悟しましょう。
基本的に小型ヤッコ同士以外の混泳は問題ありません。あまりに臆病な魚は多少ちょっかいをかけられるかもしれませんが、こちらも深刻な問題になることは少ないようです。
また、ヤッコはサンゴも食べる食性なので、水槽内でもサンゴと一緒に飼育しているとサンゴが食べられてしまうことがありますので注意が必要です。
特に共肉が柔らかいサンゴ(主にLPS)を好むようで、オオバナサンゴやキクメイシなどは多くの場合食べられてしまいますのでこれらのサンゴを飼育している場合は小型ヤッコとの共存は諦めた方がいいかもしれません。
ですが小型ヤッコはヤッコの中ではサンゴ食性が強くない方ですので、ソフトコーラルやミドリイシ属は突かれることはあっても完全に食べられるということは少ないです。
なので多少サンゴの調子が落ちるリスクはありますが、これらのサンゴとは一緒に飼育することは可能です。実際に小型ヤッコはサンゴ水槽で飼育されることが多いです。
サンゴが多少突かれるかもしれないけどそれでも飼育したい!と思えるほど魅力的な種であることの現れですね。
小型ヤッコの飼育環境
小型ヤッコは大きさも3cm~8cm程度の小型種で、餌もよく食べる丈夫な種ですので、基本的には30cm以上の水槽で、一般に海水魚を飼育できる環境が整っていれば飼育は可能です。
30cm水槽だと1匹、60cm水槽なら相性がよければ2匹くらいは飼育する事ができます。
90cm以上の水槽でも小型ヤッコ3種以上の混泳は、難易度が高いので初心者の方にはあまりおすすめできません。
以下の記事で一般的な海水魚を飼う場合に必要な用品をまとめてありますので、参考にしてください。
ベルリンシステムを採用したサンゴ水槽で飼育されたヤッコは通常ろ過で飼育された個体に比べて明らかに体色がよく出て健康だということが分かります。
通常ろ過やベルリンシステム式ろ過については以下の記事を参考にしてください。
また、自然界では海藻をよく食べているので、餌に植物性の強い餌を混ぜて与えることで状態良く飼育することができるようです。
筆者も飼育している小型ヤッコにはキョーリン ひかりプレミアム 海藻70Sなどの植物性の強い餌を与えるようにしています。
また、どちらかというと水面の餌よりも落ちてくる餌を積極的に食べる傾向にありますので、浮遊性の餌よりも沈下性の餌の方が良く食べてくれると思います。
スズメダイなど、浮遊性の餌を良く食べる海水魚と混泳させる場合、これらの餌を混ぜて与える事で全ての魚に満遍なく餌が行き渡るようになるでしょう。
照明については、強すぎる照明で日焼けしてしまうヤッコもいますので、注意が必要です。
フレームエンゼルやマルチカラーエンゼルなどは特に日焼けをしやすく、強光下での飼育をすると体色が黒ずんでしまう場合が多いです。これらの種を飼育する場合は特に注意が必要だと言えます。
おすすめの小型ヤッコ一覧
筆者の飼育経験なども交え、飼育初心者の方にもおすすめの小型ヤッコを紹介します。
もちろん、ここに掲載されていないからといっておすすめでないというわけではありませんのでご了承ください。
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フレームエンゼル
小型ヤッコは海水魚の中でも人気の種ですが、その中でも特に人気なのがこのフレームエンゼルです。
鮮やかな真っ赤な体色がとても印象的で、水槽内でとても目を引きます。
小型ヤッコらしく、飼育は容易で混泳もさせやすいタフな性格、値段も手ごろと、まさに飼育初心者におすすめの海水魚です。
フレームエンゼルは生息域によって若干体色の違いがあり、マニラ産やマーシャル産の個体はオレンジ、朱色っぽい個体が多く、クリスマス島産の個体はより紅色に近い体色をしています。
中でも、ハワイ島付近の個体はハワイアンウルトラフレームなどと呼ばれ、その真紅の体色が非常に美しく、人気が高いです。(値段も高いです笑)
色味は好みですのでどの産地の個体が良いという訳ではありませんので自分の好みの産地の個体を選びましょう。
また、フレームエンゼルは強い照明で日焼けをしやすいのでメタハラを使用している水槽では黒ずんでしまう可能性が高いので注意が必要です。
レモンピールエンゼル
その名前の通り、レモン色をした鮮やかな小型ヤッコです。
目元のブルーのアイシャドウも特徴的で、同じイエローの体色の小型ヤッコであるヘラルドヤッコとはここで見分ける事ができます。
レモンピールも小型ヤッコらしく、丈夫で飼育しやすいので飼育初心者にもおすすめできる海水魚です。
ここまで鮮やかなイエローの体色を持つ海水魚はなかなか珍しいので、いるだけで水槽内が明るくなりますね。
レモンピールを飼育するとくに注意する点は、サンゴの食害です。
レモンピールは小型ヤッコの中でも特にサンゴ食性が強く、多くの種類のサンゴを食べてしまいます。
最悪の場合、サンゴが死んでしまう事もあるので、サンゴを飼育している水槽に入れようとする場合や、これからサンゴを飼う予定がある場合などは、導入を考える必要があります。
しかし、ヤッコのサンゴへの食害は個体差によるところが大きく、レモンピールでも全くサンゴに興味を示さない個体もいるようなので、必ずサンゴを食べてしまうというわけではありません。
しかし、小型ヤッコの中でもサンゴを食べてしまう可能性が高い種であることは知っておくべきでしょう。
ルリヤッコ
ブルーとオレンジのベース体色に縞模様が美しい小型ヤッコです。
ルリヤッコも餌付きやすく、丈夫な小型ヤッコです。また、他の小型ヤッコに比べて値段が安めなので、飼育初心者の方がはじめに飼育する小型ヤッコ入門種としておすすめです。
ルリヤッコは生息地により体色が大きく変わります。上記の個体はマニラ産ですが、この産地のルリヤッコは青い部分が多めです。
バヌアツ産のルリヤッコなどではほとんどがオレンジ色でブルーが僅かにある程度の極端なカラーをしていて、産地によりここまで体色が変わる魚も珍しいです。
ショップへ行って自分のお気に入りのカラーパターンを探すのも面白いかもしれません。
ルリヤッコもレモンピール同様、小型ヤッコの中ではサンゴを食べてしまう傾向が強いので注意が必要です。
アフリカンフレームバックエンゼル
アフリカンピグミーエンゼルとも呼ばれる小型ヤッコです。
濃いブルーとオレンジの2色の塗り分けが印象的なヤッコで、上記のヤッコたちに比べると若干サイズが小さい個体(3~5cm)がよく流通します。
餌も良く食べ、丈夫な小型ヤッコです。また、タフな性格をしている為、どんな海水魚とでも混泳させやすいです。
個人的に、小型ヤッコの中では特に好きな種です。
チェルブピグミーエンゼル
濃いブルーの体色に、イエローヘッドが特徴的な小型ヤッコです。
チェルブピグミーエンゼルは、あまり大きくならない小型ヤッコの中でも特に小さく、最大でも5cm程度にしかならない超小型種です。
ですので30cm水槽などの小型水槽でも長期的に飼育が可能でしょう。
餌付きやすく、また非常に活発に動き回る種ですので常にどこかを突いて泳いでいます。
小ささや仕草などが可愛らしく、ずっと見ていても飽きない海水魚です。
個体サイズが小さいため、餌はこまめに与えないと痩せてしまいます。自然に餌となる微生物などが発生しやすいサンゴ水槽での飼育がおすすめです。
輸送距離が長いカリブ便での入荷となるので、小型種ながらなかなか高価な海水魚となっています。
ポッターズピグミーエンゼル
オレンジベースの体色に、独自の縞模様が非常にインパクトの強いハワイに生息する小型ヤッコです。
このサイケデリックな模様は好みが分かれそうですね。
強烈な見た目とは裏腹に、性格としては他の小型ヤッコよりは若干おとなしい面があるので他の小型ヤッコと混泳させた場合はカーストが下になる場合が多いです。
とはいえやはり小型ヤッコですので基本的には餌も良く食べ丈夫なので飼育は容易な部類です。
レモンピール同様、サンゴを食べてしまう傾向が強いので注意が必要です。
まとめ
小型ヤッコについて知ることができましたか?
小型ヤッコは海水魚の中でも特に人気の高いグループで、小型水槽から大型のサンゴ水槽まで幅広いタイプの水槽で、また飼育初心者から上級者まで幅広い層で飼育されています。
飼育は容易、でも色鮮やかで動きもおもしろい、まさに飼育初心者向けの海水魚ですので、飼ってみた事がない方は是非一度飼育してみてください。小型ヤッコの魅力にとりつかれてしまうと、今後小型ヤッコ無しの水槽では満足できなくなってしまいますよ笑
以上、おすすめ小型ヤッコの紹介でした。
飼育初心者におすすめの海水魚を紹介している以下の記事もおすすめですのでこの記事の後にぜひ読んでみてください。