この記事では、マリンアクアリウムで飼育されるサンゴとはどういう生き物なのか、その生態や飼育方法について解説していきます。
そもそもサンゴとは?
サンゴとは、分類学的には刺胞動物門花虫網に属する”動物”です。
一般に、サンゴと聞いて連想するものは上記の画像のような色とりどりの岩や枝の集まりのようなサンゴ礁でしょう。もちろん、この認識も間違ってはいません。
あの色のついた岩のようなものも、造礁サンゴというサンゴの一種です。
あの岩が動物だとは納得してもらえないかもしれません。そこでまずはサンゴという動物についてもう少し掘り下げてみましょう。
サンゴは、刺胞動物門に属するといいましたが、この刺胞動物門には、クラゲやイソギンチャクなども同じく属しています。
クラゲやイソギンチャクに共通する特徴として、毒を持つ触手を複数持っているということです。
そして、クラゲやイソギンチャクが毒を持つ触手を持っているのと同じく、サンゴも毒のある触手を持っています。
上記の画像はイソギンチャクですが、このイソギンチャクを超ミニサイズに縮小したものがサンゴの本体だと思ってください。
また、この触手を含むサンゴの本体をポリプと呼びます。
つまり、サンゴというのは本来1mm~数cm程度の触手を持つ小さな個体(ポリプ)だということです。
サンゴ(ポリプ)は、自らを外敵から守るために、身の回りに石灰質の岩のような骨格を作ります。そしてその骨格を広げていき、自らのクローンを作り出しポリプの個体数を増やすと共に、更に骨格を広げていきます。
こうして長い年月をかけてサンゴ(ポリプ)が何百万、何千万と集合したものがこの岩のような造礁サンゴの正体というわけです。
すなわち、一般にサンゴとして知られているあの岩のようなものは、サンゴが作り出した骨格であり、実際のサンゴ本体はその骨格に住むポリプのことを言います。
この画像は造礁サンゴを拡大して見たものですが、小さな触手のようなものがいくつもあるのがわかるでしょうか?
これら一つ一つがサンゴ一個体、つまりポリプであり、造礁サンゴのように超小型のサンゴ(ポリプ)が無数に集まって一つのサンゴ個体のような振る舞いをするサンゴを群体サンゴと言います。
上の画像のサンゴはミドリイシというサンゴですが、ミドリイシは小さなポリプが骨格と共に長い年月をかけて大きくなった群体サンゴということですね。
また、サンゴ一個体がもう少し大きいサイズ(数cm)の個体で、そのサンゴ単体で一つのサンゴとなるサンゴを単体サンゴと言います。
上記は単体性サンゴのクサビライシですが、これが一つのポリプで一つのサンゴとなっている例ですね。
(触手が多いので群体サンゴだと勘違いしやすいですが、これらの触手は全て1つのサンゴのものです。)
まとめとしては、サンゴは思ってるよりも一つの個体としては小さく、触手を含む一つのサンゴの個体をポリプと呼び、このポリプが複数集まってできたものを群体性サンゴ、ポリプがそのままひとつのサンゴ個体となるものを単体性サンゴと言うということです。
ポリプという言葉はサンゴを飼育する上で何度も聞くことになると思うのでここでしっかりとどういうものなのか理解しておきましょう。
また、サンゴの種類や分類について更に詳しく知りたい方は以下の記事でまとめてありますのでよかったらこちらも読んでみてください。
サンゴはどうやって生きているの?
さて、サンゴがどういうものか理解したところで、サンゴの生態の話に移ります。
先ほども言いましたが、サンゴは動物ですので、私たち人間と同じように呼吸もしますし、食事もします。
ですが、サンゴはこの呼吸や食事から得るエネルギーにはほとんど依存せずに生きています。
では、呼吸も食事もほとんどぜず、サンゴはどうやって活動エネルギーを得ているのでしょうか?
その答えは、サンゴの体内に生息する”褐虫藻”という生物にあります。
サンゴは、自らの体内に褐虫藻という植物の一種を飼っています。この褐虫藻が光合成をして得たエネルギーをサンゴが貰っているというわけです。
例えるならサンゴは自らの体内で畑を作っているというイメージです。
光を当て植物を育てることでその育った植物を収穫し、エネルギーとしているわけです。
これは自ら動く事が出来ないサンゴが、動かなくてもエネルギーを得る為に編み出した知恵だと言えます。
このようにサンゴは、動物でありながら、植物のような方法で活動エネルギーを得ているちょっと変わった生き方をした生き物なのです。
ここで更に話をややこしくするようなことを言ってしまいますが、このように褐虫藻を体内に飼っているサンゴを、造礁性サンゴと言います。
造礁性サンゴは、褐虫藻に光合成をしてもらわなくてはいけないので、基本的に強い光の当たる赤道付近の浅い海に生息しています。
勘のいい方ならもうわかると思いますが、褐虫藻を体内に飼っていないサンゴもいます。このようなサンゴを、非造礁性サンゴと言います。
非造礁性サンゴは、触手による捕食で代謝のほぼすべてのエネルギーをまかなっています。
また、褐虫藻に光合成をしてもらう必要がないので、普通、深い海に生息しています。
造礁性サンゴも、多少は捕食によるエネルギーの自給もしていますがその割合は全代謝エネルギーの1割程度だと言われています。
よってほぼ光に依存して生きていると言っても過言ではありません。
このように、サンゴは同じサンゴでも造礁性サンゴか、非造礁性サンゴかによって全く違ったものに依存して生きているという不思議な生態をしている変わった生き物でもあるのです。
サンゴって飼育できるの?
結論から言うと、今ではほぼ全ての種のサンゴを飼育することができます。
サンゴは清浄な海に生息しているので、飼育するうえで清浄な海水を用意することは必須条件なのですが、この清浄な海水を自然の海に比べてあまりにも小さい水槽内で再現することはとても困難でした。
ですが最近では、様々な飼育方法の確立や飼育機材の発展などがあり、サンゴは海水魚を飼育するのと同じような感覚で簡単に飼育することができるようになりました。
ただし、一部のサンゴは様々な高価な機材が必要になったり、とてつもない手間がかかったりと簡単に勧められるものではありません。
具体的には、造礁性サンゴのうち、特に強い光を必要とするものや、非造礁性サンゴ全般が当てはまります。
サンゴ飼育初心者の方はこういった飼育が難しいとされるサンゴのことはひとまず考えず、飼育が簡単とされるサンゴから始めるのが無難だと思います。
まとめ
サンゴがどういう生き物で、どうやって生活をしているのか理解していただけたでしょうか?
サンゴには様々な種類があり、それぞれ違った形状、色彩を持っていて、それぞれに違った魅力があります。
サンゴ飼育は決して難易度的にも金銭的にも簡単な趣味であるとは言えませんが、それに見合った魅力があると筆者は思っています。
簡単なサンゴでしたら海水魚を飼うのと同じような設備で飼うこともできますので、海水魚の飼育がある程度できるようになったビギナーさんも、サンゴの飼育を考えてみてはいかがでしょうか。
サンゴの飼育方法については以下の記事で詳しく解説していますのでこの記事を読んだ後におすすめです。