NO3:PO4-Xとはレッドシー社から発売されている海水水槽用の添加剤です。
この記事ではNO3:PO4-Xの仕組みや効果などを解説しながら
NO3:PO4-Xがどれだけ素晴らしい添加剤なのかをレッドシー信者の筆者がお伝えしていきます。
NO3:PO4-Xとは
読み方はたぶん「エヌオースリーピーオーフォーエックス」・・・だと思います。
NO3は硝酸塩、PO4はリン酸塩を表します。
Xは多分ですけど除外するという意味のexcludeの略じゃないかなと思います。(適当)
つまりNO3:PO4-Xは硝酸塩とリン酸塩を除去するという意味です!!!
実際にレッドシーのNO3:PO4-Xの商品ページには以下のように記載されています。
効果抜群。全てのリーフ&マリンシステムで硝酸塩とリン酸塩をバイオの力で減少させます。また、サンゴの成長と色上がりを促進します。
RedSea NO3:PO4-Xより引用
いきなり何の説明もなしに「効果抜群」と言い切っているあたりにレッドシーの自信を感じますね。
まあ実際に効果は抜群な訳ですが、このNO3:PO4-Xという添加剤がどう効果が抜群なのか
仕組みや利点などを徹底的に解説していきます。
NO3:PO4-Xの仕組み
既に述べた通り、NO3:PO4-Xは硝酸塩とリン酸塩を減少させる添加剤です。
といっても、NO3:PO4-Xそのものが硝酸塩とリン酸塩を吸着したりする訳ではありません。
NO3:PO4-Xは、簡単に言ってしまうとバクテリアのエサです。
どういうことなのか、順を追って説明していきます。
まず、水槽内には必ず無数のバクテリア(細菌)が存在しています。
バクテリアとひとくちに言っても実に様々な種類のバクテリアが存在していて
悪いものもいれば良い働きをしてくれるものもいます。
アクアリウムにおいてバクテリアと言えば、基本的には有益なバクテリアのことを指し、
特にろ過バクテリアのことを言います。
ろ過バクテリアは有害なものを、無害なものへと分解してくれる働きを持つバクテリアのことです。
このろ過バクテリアの中には、硝酸塩を分解するバクテリアももちろん存在します。
しかし、硝酸塩を分解するバクテリアは活動に炭素が必要であり
通常、水槽環境ではこの炭素が不足しているためこのバクテリアはあまり積極的に活動していません。
つまり硝酸塩はそれ以上は分解されにくく
蓄積されてしまった硝酸塩は水換えをすることで減らすのが一般的な方法でした。
しかし水換えで減らすことのできる硝酸塩にも限界があり、
硝酸塩の蓄積スピードに追い付かない場合もあります。
水換えでしか減らすことができない硝酸塩を分解してくれるバクテリアが働いてくれればどれだけ楽ができるか・・・
じゃあこの硝酸塩を分解するバクテリアに燃料である炭素を与えればいいんじゃね?
という考えがNO3:PO4-Xに代表されるバクテリオプランクトンシステムの考え方です。
NO3:PO4-Xはこの硝酸塩を分解するバクテリアに作用する炭素源を含み、
このバクテリアを増殖させることで硝酸塩を減らすという仕組みの添加剤です。
また、NO3:PO4-Xにはリン酸塩を蓄える働きのあるバクテリアに作用する炭素源も含まれています。
リン酸塩を蓄えるバクテリアを増殖させることで水槽内のリン酸塩を吸着させ
最終的にはプロテインスキマーによって水槽外に除去します。
NO3:PO4-Xはこのように硝酸塩だけでなく
リン酸塩まで除去する働きを持った一石二鳥なスーパー添加剤なのです。
ただしバクテリアの量が増えるため酸欠防止のため、またリン酸塩を蓄えたバクテリアを除去するために
強力なプロテインスキマーが必須となる点は注意しましょう。
硝酸塩・リン酸塩を減らすメリット
NO3:PO4-Xはバクテリアの力を利用して硝酸塩とリン酸塩を減らす添加剤だということがわかりました。
では実際のところ硝酸塩とリン酸塩を減らすことでどのようなメリットがあるのでしょうか。
まず硝酸塩ですが、硝酸塩を減らすことで海水魚やサンゴをより健康に育てることができます。
海水魚飼育の場合、硝酸塩の値は気にされないことがほとんどですが、
硝酸塩が多いか少ないかで明らかに海水魚の状態に差が生じます。
サンゴ水槽で飼育されている海水魚が色艶が良く生き生きとしているように見えるのは
サンゴ水槽が比較的硝酸塩の少ない環境で維持されていることが多いからです。
また、サンゴ飼育の場合は硝酸塩を減らすことで飼育できるサンゴの種類の幅が広がり、サンゴの状態も良くなります。
サンゴにとって硝酸塩は微量でも害になり、少ないに越したことはないといえます。
(少なすぎも問題になることがあるが)
硝酸塩を減らすことはサンゴの状態を良くすることとほぼイコールだと思っても良いでしょう。
リン酸塩はコケの主な発生原因となる物質なので、
リン酸塩を減らすことでコケの発生を制御できます。
また、リン酸塩が多い環境ではサンゴの成長に害が生じるので、
リン酸塩を減らすことでサンゴの成長を助けることもできます。
このように、海水水槽にとって硝酸塩とリン酸塩を減らすことには非常に多くのメリットが存在します。
NO3:PO4-Xのここが凄い
NO3:PO4-Xがどのような添加剤かわかったところで、
実際にNO3:PO4-Xを5年以上使用している筆者がNO3:PO4-Xのおすすめポイントについて解説していきます。
硝酸塩除去能力が異常
NO3:PO4-Xはむちゃくちゃ強力に硝酸塩を除去します。
どれくらい強力かというと60cm水槽に海水魚を15匹くらい入れて餌をバンバンあげても硝酸塩の値を0ppmでキープできるくらいです。
そもそも60cm水槽に海水魚を15匹も入れるのがどうかと思いますがそれは気にしないでください笑
この動画が当時私が維持していたその水槽の動画なのですが、
サンゴの中で最も硝酸塩・リン酸塩の蓄積に敏感とされるミドリイシがよく成長・色揚りしているのが分かっていただけると思います。
ここまで魚の多い水槽でミドリイシを綺麗に維持出来ていたのは
このNO3:PO4-Xの力に他なりません。
この頃から今現在まで数多くの水槽でNO3:PO4-Xを使用してきていますが、
どの水槽でも硝酸塩はほとんど検出されたことがありません。
この硝酸塩除去能力はもはや異常と言ってもいいくらいで、
NO3:PO4-Xを使って硝酸塩の蓄積に困ることはまずありえないと言ってもいいでしょう。
ただし硝酸塩除去能力が高すぎるあまり、硝酸塩を除去し過ぎてしまうというリスクもあります。
多少の硝酸塩があった方が良いとされるソフトコーラルやLPSには
NO3:PO4-Xの添加で逆にダメージを与えてしまう場合もあります。
この場合はサンゴの栄養となるアミノ酸などを添加するか、NO3:PO4-Xの添加量を調整するかで対応できます。
サンゴ用のアミノ酸は同じレッドシー社からリーフエナジーとしてリリースされていて、
このあたりの総合的なケアがされているという点もNO3:PO4-Xを評価できる理由の1つです。
低コストで簡単に運用が可能
NO3:PO4-Xを長く使用している理由の1つに、
運用の簡単さ、コストの低さが挙げられます。
バクテリアを活性化させて栄養塩を減らすというバクテリオプランクトンシステムには
NO3:PO4-X以外にもバイオペレットやZEOvitなど多くの方法があります。
しかしバイオペレットはバイオペレットリアクター、メディアとその設置場所が必要になり、
ZEOvitでも同様にZEOvitリアクターとメディア、多くの添加剤とその設置場所が必要ということもあり
掛かるコストや設備を考えるととても手軽に始められるとはいい難いものです。
その点NO3:PO4-Xは1つの添加剤を毎日規定量与えるだけなので
コスト、運用共に非常に手軽に行えます。
NO3:PO4-X自体がそこまで高いものではないのも良い点ですね。
添加量にもよりますが60cm水槽だと年間2000円も掛かりません。
素晴らしいコストパフォーマンスです。
リスクが少ない
レッドシー曰く、
NO3:PO4-Xを継続的に正しく使用することで、望まざる副作用は起きません。全ての海水魚、サンゴ、微生物にとって安全です。万一、多く入れてしまった場合でも、システムに対応するスキマーが設置してあれば、致命的なダメージは避けられます。
RedSea NO3:PO4-Xより引用
と安全性については自信があるそうです。
実際、長期間使用している筆者の意見としても
NO3:PO4-Xを入れることによるリスクは無いと言い切ってしまってもいいレベルだと思います。
そもそもNO3:PO4-Xが自然のプロセスに基づいた硝酸塩・リン酸塩の除去方法なので
化学反応を起こしてどうたらこうたらといった添加剤と違ってリスクは低いというのは当たり前のことなんですけどね。
水槽に添加剤を入れるのに抵抗があるという方は多いと思います。
筆者もどちらかと言えば添加剤否定派なのですが、
このNO3:PO4-Xとヨウ素、アミノ酸だけは添加しても良い(添加すべき)ものだと考えています。
どうしても気になる方はNO3:PO4-Xを添加剤としてではなくエサとして考えれば、
魚にエサを与えるのが普通なのと同じ気持ちで入れることができるのではないでしょうか?
NO3:PO4-Xのここが微妙
NO3:PO4-Xはメリットの多い添加剤ですがもちろんデメリットが存在しないわけではありません。
筆者の思うNO3:PO4-Xのデメリットを挙げていきます。
リン酸塩の除去能力
NO3:PO4-Xは硝酸塩の除去能力は異常に高いですが
リン酸塩の除去能力については何とも言えません。
というのも海水水槽においてリン酸塩と硝酸塩は密接な関係にあるらしく、
どうもリン酸塩を減らすためには多少の硝酸塩が必要みたいです。
NO3:PO4-Xは硝酸塩を強力に除去してしまうので
硝酸塩が除去されきってしまった時点でリン酸塩の減少が起こりにくくなるようです。
我が家の水槽でも硝酸塩は簡単に0ppmになりますが
リン酸塩だけはNO3:PO4-Xの添加だけではどうしても0ppmにすることができませんでした。
リン酸塩が本当に全く存在しないというのもそれはそれでまずい環境なのでこれが正しい帰着点といえばそうなのかもしれませんが
どうしても気になる場合は別途リン酸塩対策をする必要があるかもしれません。
筆者はNO3:PO4-Xとは別にリン酸塩の吸着材を入れることでリン酸塩を限りなく低い値で維持しています。
ちなみにレッドシーはNO3:PO4-Xとリン酸塩吸着剤の併用を推奨していないのでやる場合は自己責任でお願いします。
筆者の環境では特に問題は起こっていません。
くさい
NO3:PO4-Xはとても臭いです。
男性の方ならプラモデルを作る際に使うセメダインのにおいを想像していただければわかると思いますが鼻にツーンとくる刺激臭がします。
良薬口に苦し・・・とは少し違う気がしますが効果のある添加剤なので我慢しましょう。
まとめ
NO3:PO4-Xは個人的にはサンゴ飼育は絶対に持っておきたい神アイテムの一つだといえます。
デメリットはくさいところ以外に見当たらず、すべてのサンゴ飼育ユーザーにおすすめできます。
ただしプロテインスキマーの併用は必須なのでそこだけは注意が必要です。
酸欠のリスクを考えると外部ろ過との併用もあまり良くない気もしますのでベルリンシステムでの使用推奨ですね。
硝酸塩が下がらなくて困っている、もっと硝酸塩を下げてサンゴを色揚げしたいと思っている方はぜひ一度試してみてください。