最近では一般的になりつつあるLEDでのサンゴ飼育ですが、少し前まではメタハラでの飼育が主流でした。
この記事では、LEDがサンゴ飼育のメインストリームとなった歴史的背景より、どんなLEDがサンゴ飼育に適しているのか、またサンゴ飼育におすすめなLED照明について解説していきます。
サンゴ飼育用LED照明の歴史
完全に余談になってしまいますがまずはアクアリウム用(サンゴ飼育用)LEDの歴史について時系列順に軽くおさらいしてみようと思います。
興味のない方はスルーして次の項から見ていただいて構いませんので暇な方はどうぞお付き合いください笑
メタハラ全盛期
今ではサンゴといえばLEDで飼育ができるという風潮ですが、少し前(10年ほど前?)まではLEDでサンゴの飼育なんて考えられないという考え方が一般的でした。
10年前といえば、筆者がサンゴの飼育を始めた時期とちょうど重なるのですが、当時はメタハラ1強時代、サンゴ飼育にはとにかく強力なパワーのメタハラを焚くかスポット型のメタハラ(すなわちスーパークール)を少しでも多く多灯するか、といった風潮でした。
というのも、当時はスコリミアもマメスナもまだ注目されていない時代でしたので、多くのサンゴ飼育者の最終的な目標はミドリイシの飼育だったわけです。
ミドリイシを綺麗に色揚げするにはとにかく強力な照明を当てるというのが当時の定説(今でもほぼ変わらないですが)でしたので、皆さんこぞってメタハラを多灯していたわけです。
そこでLEDはというと、当時はまだ家庭用電球のLEDも普及していなかった時代、出力が圧倒的に足りず、ミドリイシユーザーには見向きもされていなかったんですね。
実際にはクラマタなど数社からサンゴ飼育用のLED(名前忘れました)が発売されて少し注目されていましたが、それも蛍光色発起の補助用照明か、あるいは夜間照明としての利用かといった程度でした。
というのも、このLEDというのがレンズも何もないただの青または白LEDランプを何十個か並べただけのもの(最近のサンゴ飼育用LEDの開発が見たら鼻で笑いそうなスペック)でしたので、サンゴ飼育に向いていないのも今考えれば当然といえば当然でした。
貧弱LED群雄割拠時代
その後、家庭用LED照明の普及に伴い、何とかLEDをアクア用照明に利用できないかと試行錯誤され、大手アクアメーカーから様々なLED製品がリリースされました。
しかしこれらの製品は魚の飼育になら使える程度の出力のものばかりで、とてもサンゴ飼育のメインとして使用できるものではありませんでした。
サンゴ飼育用LED登場時代
暫くして、サンゴ飼育用にと高出力なLEDやレンズが使われたLEDが登場し始めます。
初期グラッシーレディオあたりですね。
このあたりの製品はソフトコーラルやLPSなどある程度のサンゴの飼育は可能でした。
雑誌などでも徐々に浸透し始め、メタハラとの比較などが本格的に考察され始めたのもこのあたりでした。
フルスペクトル黎明期
日本の研究熱心なユーザーにより、現在のサンゴ飼育用LEDに不足しているのはUV(紫外線)だという説が提唱され、次第にそれが認知されていきます。
また、その過程でLEDに重要なのは明るさではなくスペクトル(波長)だという説も提唱され、UV域やその他さまざまな波長領域を完備した自然の海に近い波長を再現するというフルスペクトル論が話題になりました。
この説に基づいて設計されたLEDはサンゴの蛍光色を非常に美しく照らし、またSPSサンゴの飼育の実績も生み出し、この説を強固なものにします。
海外での製品も釣られるようにUV入りの製品をリリースし、製品のスペックにはスペクトルグラフ(波長グラフ)が記されるようになったのもこの頃です。
現在のシステムLED全盛期
その後はフルスペクトルの再現を基本とし、出力の向上やレンズの改良など様々な改良がなされ、性能は順調に向上し現在に至ります。
現在では、国内外問わず、調光機能やタイマーを組み込んだシステムLEDと呼ばれる高性能LED機が主流となっていて、1台でSPSのような強光を必要とするサンゴの飼育・色揚げが可能となっています。
その波に押され、サンゴ飼育の鉄板であったメタハラは姿を消しつつあります。
未だにメタハラを愛用するコアなユーザー(私もですが)もいますが、現状消費電力や明るさ、波長など総合的に見てLEDにかなりの面で負けてしまっていると言わざるをえない状況です。
とはいえスペクトルなどまだまだLEDがメタハラに及ばない点もあるんですけどね。
このように、ここ数年でサンゴ飼育用LEDは飛躍的に進化したといえます。
サンゴ飼育用LEDのキーワードとしては、「フルスペクトル」「UV」「システムLED」あたりですね。
このあたりのワードを気にしながら、どんなLEDがサンゴ飼育に向いているのか、次項で解説していきます。
サンゴ飼育に向いているLED照明は?
さて、ここからは実際にサンゴ飼育に向いているLED照明の特徴について解説していきます。
述べた通り、LEDがサンゴ飼育用の照明として地位を獲得できた背景には、「フルスペクトル」「システムLED」という2大革新があります。
フルスペクトルLED
フルスペクトルとは、文字通りすべての波長の補完を意味します。
どういうことかというと、自然の光(太陽光線)というのは紫外線から赤外線まで、あらゆる波長の光が途切れることなく断続的に含まれている光(フルスペクトル)なのです。
一方、LEDというのは例えば青(450nm)の光なら、まさにその青(450nm)の光しか出せていません。
しかし、サンゴはあらゆる領域の波長を必要としています。
例えば、光合成には赤外線に近い波長を、蛍光発起には紫外線に近い波長を・・・などです。
また、サンゴの種類や色の違いによって要求する波長も変わってきます。
太陽光線は、あらゆる領域の波長をもっていますので、すべてのサンゴの要求に応えることができます。
しかし、例えば青色(450nm)単色のLEDだった場合、青色(450nm)を要求するサンゴに対しては対応できますが、そうでないサンゴにはまったく対応できません。ないものはないのです。
これが、過去の青白LEDにおける波長の欠損と言われるサンゴ飼育におけるLEDの欠陥です。
そして、この波長の欠損をできる限り無くし、太陽光のようなフルスペクトル目指すというのが、フルスペクトルLEDの狙いというわけです。
とはいえ、明確なフルスペクトルの定義があるわけでもないので、複数の波長素子を使用し、ある程度太陽光の波長に近い波長を得ることができるLEDをフルスペクトルLEDと呼ぶことにします。
小難しい話をしてしまいましたが、つまり「サンゴは太陽を浴びて育っているわけだから、その太陽を真似したLEDを当てればいいんじゃね?」ということです。
このような流れから、最近のサンゴ飼育用LED製品では、フルスペクトルに近いスペクトルを持ち、またサンゴの蛍光発起に有用なUV域の波長が充実した製品が求められています。
システムLED
システムLEDとは、調光機能やプログラムタイマー機能、無線設定機能など便利な機能を組み込んだ多機能LED照明機のことを指します。
最近のサンゴ飼育用LEDではシステムLEDであることはもはや前提となりつつあります。
サンゴの要求に合わせたスペクトル設定ができる調光機能は理に適っていて非常に便利です。
また、最近のスマホ時代に合わせてスマホアプリでの設定ができるなどの機能ももはや一般的になりつつあります。
筆者としてはいちいち接続がめんどくさいのでハードのみで完結してくれると逆にうれしいのですが世論は違うようですね笑
とはいえ、最近の流れを見るにサンゴ飼育用LEDはシステムLEDであることが要求されているようです。
さてここまで読んでいただいた方なら「フルスペクトル」である「システムLED」がどうやらサンゴ飼育には良さそうだということがわかって頂けるでしょう。
そこ次項でフルスペクトルのシステムLEDでおすすめな製品を紹介していきます。
サンゴ飼育にお勧めLED照明
ここからは筆者が実際に使用した感想やショップで実機を見た感想、周囲の評価などを踏まえおすすめのサンゴ飼育用LEDについて紹介していきます。
サンゴ飼育用LED購入時の参考にしてみてください。
AI PRIME
AI PRIME HD
AI
参考価格:¥-※
charm:¥39,800※amazon:¥40,999※
※掲載時の価格です。現在の価格とは異なる場合があります。
小型水槽用のシステムLEDであり、またUV~赤波長までカバーしたフルスペクトルLEDでもあります。
専用スマホアプリで各素子1%単位で調整が可能、またタイマーも細かく設定ができます。
これだけ最新の機能、スペックを詰め込んでこの値段とは、時代も変わったな・・・と思わせる小型水槽でのサンゴ飼育用LEDのコスパお化けです。
基本的には60cm水槽までのメイン照明として、補助照明として60cmや90cm水槽で使用するのもありかと思います。
筆者が実際に60cm水槽で2年使用した感想としては、「小型のわりにハイパワー、何でもできる優等生」といった印象でした。
60cm水槽までのユーザーには自信をもっておすすめできるLED照明です。
グラッシーレディオ RX122 reef
GrassyLeDio RX122 Reef
ボルクスジャパン
参考価格:¥-※
charm:¥16,800※amazon:¥17,291※
※掲載時の価格です。現在の価格とは異なる場合があります。
こちらはE26経口のスポットタイプのLEDです。
サンゴ飼育用LEDの先駆者であるボルクスジャパンの最新モデルとなるこちらのLEDはUVをしっかりと完備したフルスペクトル仕様となっています。
用途によりLED素子構成の異なる数種類のモデルが発売されています。
Reefモデルはサンゴ飼育向けということで、よりUV~青波長に特化したモデルとなっています。
太陽光に近い製品を求めているのでしたらFreshモデルがおすすめです。
また、スポットタイプのLEDなのですが、別売りのUSBタイプのモジュールを差し込むことでスマホアプリでの調光、タイマーの設定が可能になるといったシステムLEDとしての一面も持っています。
スペックとしてはPRIMEに近いですが、こちらはスポットタイプのLED照明、かつ選べる5種類のモデルということで、どちらかというと大型水槽での多灯、補助スポットに向いている製品かなと思います。
もちろん、60cm程度の水槽までのメイン照明としても非常に優秀なスペックとなっています。
大型水槽でメイン照明の補完に自分に合った波長のモデルを追加で設置するなどの使い方にもおすすめできるLED照明です。
別売りのUSBモジュール、LEDクリップライトも必要に応じてどうぞ。
Ai Hydra 26/52 HD
PRIMEで知られるAI社の大型水槽用モデルのシステムLEDライトです。
PRIMEが60cmまでの水槽向けだったのに対し、こちらは90cm以上の水槽に適したスペックです。
26/52の2モデルの違いは素子数で、素子数が倍の52の方がより強力なのは言うまでもないです。
90cm水槽でソフトコーラル、LPSの飼育でしたら26、SPSの飼育となると52が欲しいところです。
PRIME同様スマホでのコントロール、1%単位での波長の調整などは変わらないのでご心配なく。
PRIMEをそのまま大型水槽向けにパワーアップしたようなHydraもPRIME同様非常におすすめのLED照明だといえます。
Radion G3 pro
Radion G3 Pro
エコテックマリン
参考価格:¥-※
charm:¥135,000※amazon:¥125,639※
※掲載時の価格です。現在の価格とは異なる場合があります。
水流ポンプなどで有名なエコテックマリンが発売するシステムLEDライトです。
Pro仕様のこちらの製品はUVやその他様々な波長を含むフルスペクトル志向の製品だといえます。
こちらも国内外問わずあらゆるサンゴの飼育実績があり、安心してサンゴ飼育に使用できるシステムライトです。
Hydraと比べると個人的にですがこちらのピアノブラック塗装の方が好きです。
スペックは似ていますので自分の飼育したいサンゴや好みに合わせて選んでみて下さい。
ちなみにcharmではまだ販売されていませんが最新モデルのG4 Proもありますので欲しい方は近くの海水魚ショップや通販サイトをご確認ください。
まとめ
サンゴ飼育におけるLED照明の歴史的背景やおすすめLED照明について知ることができましたか?
LED照明のここ数年での進化は本当に目を見張るものがあります。
筆者は昔からメタハラ信者なので未だにメタハラメインの飼育をしていますが、周囲を見てもLEDでの飼育ばかり、記事を書いていてもLEDが非常に優秀だということが改めてわかり・・・
LEDへの浮気心が・・・苦笑
間違いなくこれからのサンゴ飼育はLEDが中心となっていくでしょう。
システムLEDは若干初期投資がかかってしまいますが、長く使えるものですしそれだけの価値は確実にありますので是非購入してサンゴ飼育を楽しみましょう!
その他蛍光灯やメタハラといった照明については以下の記事で詳しく解説していますので興味がある方はこちらの記事もおすすめです。
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