サンゴには非常に多くの種類がいます。
ショップで売られている、家庭で飼育できるサンゴでも100種類以上はいるでしょう。
サンゴの飼育が初めての方は、サンゴの種類や飼育難易度などわからないことがたくさんあると思います。
この記事では、飼育歴15年越え自称中級者の筆者がサンゴ飼育が初めて、あるいはまだ経験が浅い方におすすめしたい
ビギナー向けサンゴを8種ピックアップしてその魅力や飼育方法などを紹介していきます。
そもそもサンゴについてよくわかっていないという方はまずは以下の記事から読むことを推奨します。
初心者向けのサンゴとは?
まずは初心者向けのサンゴとはどういったサンゴが当てはまるのかその条件・ポイントについて解説していきます。
飼育初心者の方におすすめできるサンゴで重要な点は以下の2点だと考えています。
- 水質悪化に強いかどうか
サンゴというのは海水魚に比べ適合する水質の条件が厳しく、ろ過不足や魚の入れすぎによる水質悪化により死んでしまうことがあります。
そのため、本格的にサンゴを飼育しようと思うと専用のろ過装置(プロテインスキマーetc)が必要となったり、
入れる魚を少な目にしたりする必要があります。
しかし、サンゴの飼育が初めての方はそういった専用の設備が整っていなかったり、
既に多くの海水魚が水槽にいる状態だったりすることが多いと思います。
従って、そういったサンゴ飼育向けの環境でなくてもある程度簡単に飼育ができるような、
水質悪化に強い種が初心者向けのサンゴであるといえます。
とはいえ、もちろんそういった丈夫な種でもサンゴ飼育向けの設備で飼育をしたほうが状態良く飼育ができるので
可能であればサンゴを飼育しようと思ったら予め水槽設備もサンゴ飼育用のものを用意すべきではあります。
- 強い照明が必要かどうか
ほとんどのサンゴは光合成により活動エネルギーを得ています。
しかし、サンゴの種類により必要となる光の強さが大きく異なります。
例えば、浅い場所に生息するサンゴは自然界では強力な太陽光を浴びていますので、
従ってこういったサンゴを水槽で飼育する場合には同様に太陽光のような強力な照明を当ててあげる必要があります。
一方で、そういった強力な光を出すことのできる照明(ハイパワーLEDやメタルハライドランプ)は
非常に高価で、サンゴ飼育初心者の方にはコストの面からあまりおすすめできません。
従って、そこそこのパワーの照明でも飼育ができる、
光の要求度が低いサンゴが飼育初心者向けのサンゴであるといえます。
上記2点はサンゴ飼育初心者の方が必ず気にしなくてはいけないポイントであるといえます。
どちらも飼育条件が緩く、丈夫な種が初心者向けのサンゴであるという点を強調しています。
というのも、サンゴという生き物は、海水魚を飼育するのと同じような感覚で飼育してしまうと本当にびっくりするくらい簡単に死んでしまう生き物です。
サンゴは白化現象が世界規模で騒がれていることからわかるように、非常に貴重で環境にとっても重要な生き物です。
こういった貴重な生き物を簡単に死なせてしまうことの無いよう、
ある程度雑な飼育をしても死なないような丈夫な種を初心者向けのサンゴとしているわけです。
もちろん、雑な飼育を推奨しているわけではありません。
サンゴを飼育しようと思ったら貴重な生き物を飼育しようとしていることを自覚し、
しっかりとしたサンゴ飼育用の設備を用意することがサンゴを飼う最低限のマナーであると筆者は考えています。
サンゴの飼育方法
サンゴの詳しい飼育方法についてはこの記事では割愛します。
以下記事で詳しく解説していますので、まだ読んでいない方は目を通しておくことをおすすめします。
ソフトコーラルの飼育方法
ハードコーラル(LPS)の飼育方法
この記事で紹介する初心者向けのサンゴは丈夫な種ばかりですので、
サンゴ飼育用の設備でなくとも飼育できるものがほとんどですが、
サンゴの健康や維持の楽さを考えるとサンゴ飼育用の設備を整えるに越したことはありません。
特にろ過システムに関しては通常のフィルターを用いたろ過よりも、
プロテインスキマーを用いたベルリンシステムと呼ばれるろ過方式の方が何倍もサンゴの飼育が簡単になりますので、
可能ならばベルリンシステムでの飼育を推奨します。
フィルターろ過方式、ベルリンシステム方式の違いについては以下の記事で詳しく解説していますのでこちらは特に目を通しておくことを推奨します。
飼育初心者におすすめのサンゴ8選
前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
筆者の飼育経験や周囲の評判を踏まえ、飼育初心者の方におすすめなサンゴを7種類ピックアップしました。
飼育雑誌やショップなどでも初心者向けとされている種ばかりですので、
ここで紹介したサンゴなら初心者の方でも比較的簡単に飼育ができると思います。
もちろん、ある程度の飼育設備や日頃の管理は必要になってきますので、
各サンゴの飼育条件を見て自分の水槽でも飼育ができそうだと思った種をまずは飼育してみてください。
ディスクコーラル
ディスクコーラルはソフトコーラルの一種で、種としてはイソギンチャクに近い仲間だといえます。
その名前の通り、円盤のような形状をしたサンゴです。
飼育は非常に容易で、水質悪化には極めて強く、
このサンゴが飼育できないようなら他のどのサンゴも飼育ができないといえるほど丈夫です笑
照明に関しても比較的適応範囲は広く、蛍光灯のような弱い照明でも飼育は可能です。
ディスクコーラルはカラーバリエーションや形状のバリエーションが非常に豊富なのが特徴だといえます。
カラーはグリーン系をメインに、ブルー、レッド、珍しいものだとオレンジやイエローなどもあります。
形状もペラペラの紙のようなタイプのものから少し肉厚なタイプ、
ストライプの模様が入るタイプやバブルディスクと呼ばれるぷくぷくとした泡のような触手を持つ面白い形状をしたタイプと
非常に様々なタイプが存在します。
また、ディスクコーラルは状態良く飼育していると勝手に分裂して増えていくのも面白いです。
一見地味なサンゴですが、色々な種を集める楽しみや増やす楽しみを味わえる意外と奥が深いサンゴだといえます。
丈夫さ | ★★★★★(極めて丈夫) |
光の要求度 | ★★★★☆(適応範囲は広い) |
値段 | ★★★★☆(比較的安値) |
総合おすすめ度 | ★★★★★(非常におすすめ) |
スターポリプ
スターポリプはソフトコーラルの一種です。
スターポリプも多くのタイプが存在しますが、上記写真のような
蛍光グリーンの触手の長い芝生のようになるタイプが特に人気があります。
スターポリプも飼育は非常に容易で、サンゴ飼育初心者でも問題なく飼育ができると思います。
水質は通常のフィルターろ過さえできていれば定期的な水換えをしっかりと行えば十分に飼育が可能です。
また、照明に関してもそこまで強い光は必要なく、LEDなら10W程度あれば問題ありません。
ただし、綺麗な蛍光グリーンを維持しようと思うと比較的強めかつ青味の強い照明が必要になってきます。
可能なら以下製品のようなサンゴ飼育用の青系LEDを当てると非常に美しい蛍光グリーンを簡単に維持することができます。
また、飼育は容易な部類ですが、水流などの条件が合わないとポリプを閉じてしまうことがあり、
長いと数週間~1か月程度閉じたままのことがあるなど若干気難しい面があるのは注意が必要です。
こういった場合置き場所を変えたり多めの水換えをすることでポリプを開いてくれる場合が多いです。
スターポリプの蛍光グリーンは他のサンゴにはない艶やかな蛍光色で、水槽内で非常に目立つ存在となります。
飼育条件としては初心者向きのサンゴですが、飼育上級者の方が好んで水槽に入れるサンゴとしても知られています。
青系の照明を使用しているのでしたら飼育が初めての方にも是非飼育して欲しいサンゴです。
丈夫さ | ★★★★☆(かなり丈夫) |
光の要求度 | ★★★★☆(青系照明が◎) |
値段 | ★★★☆☆(モノによる) |
総合おすすめ度 | ★★★★★(非常におすすめ) |
マメスナギンチャク
マメスナギンチャクはソフトコーラルの一種です。
ソフトコーラルの中でも種類としてはイソギンチャクに近い仲間です。
1cm弱のポリプが岩にびっしりと集まった群体で売られていることが多いです。
マメスナギンチャクも非常に丈夫なサンゴですので飼育は極めて容易です。
ここまで紹介したディスクコーラル、スターポリプ、マメスナギンチャクは飼育条件が緩く、
非常に丈夫であるため3大初心者向けサンゴとして取り上げられることが多いです。
本当に初めてサンゴを飼育するからとにかく丈夫な種を!ということでしたら
これらの3種から選んでおけば間違いないです。
マメスナギンチャクもディスクコーラル同様に
カラーバリエーションが非常に豊富なのが特徴です。
蛍光グリーンを筆頭にレッド、ピンクやオレンジなど非常に様々な色の個体が存在します。
中でも特に色の複雑な個体や珍しい模様の入った個体などは個別に名前が付けられ、
1粒数万円といった驚きの価格で取引されることも珍しくありません。
飼育条件としては初心者向けのサンゴですが、好んで収集しているのは一部の上級者やマニア層であるというちょっと変わったサンゴです。
マメスナギンチャクは条件が合えば簡単に増えていくというのも収集家を虜にする要因なのかもしれません。
一般的なグリーンやレッド系の個体でしたら値段もそこまで高くなく、
青系の照明を当てることで非常にきれいな蛍光色を楽しむことができるので
飼育初心者の方はまずはこういった個体から飼育してみるのがいいと思います。
丈夫さ | ★★★★★(極めて丈夫) |
光の要求度 | ★★★★☆(適応範囲は広い) |
値段 | ★★★☆☆(モノによる) |
総合おすすめ度 | ★★★★★(非常におすすめ) |
ウミキノコ
ウミキノコはソフトコーラルの一種です。
長い触手を持ち、イソギンチャクのような見た目をしていますが全く別種のサンゴです。
ウミキノコもソフトコーラルということもあり、
比較的丈夫なサンゴですのでサンゴ飼育初心者にもおすすめできます。
水質は最初に紹介した3種より若干厳しめな印象はありますがそれでもサンゴの中では適応範囲は広いほうです。
フィルターを用いた通常ろ過の場合は定期的な水換えをしっかりとしましょう。
プロテインスキマーを使用したベルリンシステムの場合は簡単に飼育が可能です。
照明は上記3種に比べるとより明るい環境を好みます。
LEDでしたら20W以上あると安心して飼育ができると思います。
また、長めの触手を持つサンゴ全般に言えることですが、
ポリプが揺れる程度の水流があった方が調子が良くなることが多いです。
サンゴの置き場所に注意したり、別途専用の水流ポンプを設置することを検討してもいいかもしれません。
ソフトコーラルの中では動きがあり見ていて飽きないサンゴですので
水槽に動きが欲しい方におすすめの初心者向けサンゴです。
丈夫さ | ★★★★☆(比較的丈夫) |
光の要求度 | ★★★☆☆(そこそこの明るさは必要) |
値段 | ★★★★☆(比較的安値) |
総合おすすめ度 | ★★★★☆(かなりおすすめ) |
カワラフサトサカ
カワラフサトサカはウミトサカと呼ばれるソフトコーラルの一種です。
枝分かれしたポリプにさらにふさふさな二次ポリプが美しい種です。
カワラフサトサカ以外にも、同じくウミトサカの仲間である
ナグラカタトサカ、ヤワタコアシトサカ、ヌメリトサカなどもほぼ同じ種として考えても大丈夫です。
これらウミトサカの仲間は比較的水質悪化に強い種が多く、飼育初心者でも飼育しやすいサンゴです。
注意する点としてはウミキノコ同様、
若干強めの光を好む点と、多少の水流があった方が調子が良くなる点です。
そのため、以下のような水流を作り出すための水流ポンプがあるとベターです。
これら2点が不足していると明らかに細く弱くなっていきますので、
そうなってしまった場合光量不足または水流不足を疑いましょう。
カワラフサトサカは基本的に褐色~うすピンク色をしている個体が多いですが、
中には鮮やかな蛍光グリーンの個体もいます。
蛍光グリーンの個体は美しいですが色の維持が比較的難しく、
蛍光グリーンの個体を飼育する場合はさらに強めの、青味の強い照明を当てることをおすすめします。
ウミトサカ類は値段の割にボリュームがあり、またよく成長するため大きなサンゴが欲しい方におすすめのサンゴだといえます。
丈夫さ | ★★★★☆(比較的丈夫) |
光の要求度 | ★★★☆☆(そこそこの明るさは必要) |
値段 | ★★★★☆(比較的安値) |
総合おすすめ度 | ★★★★☆(かなりおすすめ) |
アワサンゴ
アワサンゴはハードコーラルの一種です。
小さなお花のブーケのような可愛らしいポリプが特徴的なサンゴです。
アワサンゴの飼育条件としてはハードコーラルということもあり、
ここまで紹介してきたソフトコーラルに比べると少し難しくなります。
しかしハードコーラルの中では比較的水質悪化に強い種ですので
ソフトコーラルからのステップアップ、ハードコーラルの入門種として非常におすすめなサンゴです。
水質に関しては可能な限り栄養塩の少ない清浄な状態を保つことが重要です。
フィルターを用いた通常ろ過ならば定期的な水換えをしっかりと
プロテインスキマーを用いたベルリンシステムならかなり簡単に飼育ができます。
照明は適応範囲が広く、上記ソフトコーラルと同程度の光があれば十分に飼育が可能です。
アワサンゴは蛍光色を持つ個体が多いため、青系やUVを含んだLED照明を当てることで
その魅力を最大限引き出すことができると思います。
小ぶりな個体が多く、その分値段も安めで手を出しやすいので
ハードコーラルのお試しに最適な初心者向けサンゴだといえます。
丈夫さ | ★★★☆☆(ある程度丈夫) |
光の要求度 | ★★★★☆(適応範囲は広い) |
値段 | ★★★★☆(比較的安値) |
総合おすすめ度 | ★★★★☆(ハードコーラル入門におすすめ) |
オオスリバチサンゴ
オオスリバチサンゴはハードコーラルの一種です。
その名の通り、成長すると大きなすり鉢のような形状になります。
オオスリバチサンゴはハードコーラルの中では比較的水質悪化に強い種ですので
ハードコーラル飼育初心者の方におすすめできるサンゴです。
照明も適応範囲は広く、LEDなら白もしくは青系の20W程度のもので飼育が可能です。
ろ過はベルリンシステムを推奨しますが、
水換えをしっかりと行っていれば通常ろ過での飼育も可能です。
オオスリバチサンゴは他のスリバチサンゴ属のサンゴに比べ、ポリプが非常に大きく見ごたえのあるサンゴです。
ポリプが大きいので水流はしっかりと当ててあげた方が状態は良くなるようです。
また、ポリプが大きく、餌を与えれば良く食べますので
以下のようなサンゴ用のフードを週1程度で与えると状態が良くなり、厚みが増します。
テーブル系の珍しい形状のサンゴであるため、サンゴ水槽の主役にもアクセントにもなるポテンシャルのあるサンゴです。
なお、名前の似ているヨコミゾスリバチサンゴは近い種類ではありますが
こちらは光への依存度が高く、比較的強めの照明を当てる必要があるなど
若干飼育難易度が上がりますので注意が必要です。
丈夫さ | ★★★☆☆(ある程度丈夫) |
光の要求度 | ★★★★☆(適応範囲は広い) |
値段 | ★★★☆☆(普通) |
総合おすすめ度 | ★★★★☆(ハードコーラル入門におすすめ) |
ウィスカーズコーラル
ウィスカーズコーラルはハードコーラルの一種です。
種としては上記オオスリバチサンゴにかなり近い種類になります。
そのため、飼育方法や難易度についてもオオスリバチサンゴに準ずると考えて問題ありません。
20W程度のサンゴ飼育用LEDと水がよどまない程度の適度な水流、
プロテインスキマーを使用したベルリンシステムで飼育すると安心です。
グリーン系のカラーリングの個体がほとんどなので青系の照明下で映えます。
ウィスカーズコーラルはオーストラリア固有種のため、
昔は入荷量が非常に少なく、とても高価なサンゴでしたが
ここ10年程度で値段もこなれてきたため、初心者の方にもおすすめできるサンゴになりました。
調子よく飼育できるとどんどん口の数が増えていくため、
サンゴの成長が実感しやすいという点も初心者の方におすすめしたい理由の一つです。
丈夫さ | ★★★☆☆(ある程度丈夫) |
光の要求度 | ★★★★☆(適応範囲は広い) |
値段 | ★★★★☆(比較的安値) |
総合おすすめ度 | ★★★★☆(ハードコーラル入門におすすめ) |
まとめ
飼育初心者におすすめのサンゴについて知ることができましたでしょうか。
基本的に、サンゴ飼育初心者の方にはソフトコーラルから飼育を始めることおすすめしています。
ソフトコーラルは丈夫な種が多く、LED照明を当てて水換えさえしていれば簡単に飼育ができます。
その簡単さの割に蛍光色が美しい種が多く、特に青色照明下で非常に美しい姿を見ることができます。
まずはソフトコーラルでサンゴ飼育の楽しさ、サンゴの美しさを知りましょう。
その先にはLPS、SPSと控えており、サンゴ飼育はまだまだ奥が深いです。
サンゴを飼育し始めると海水水槽が一層鮮やかになりますので是非チャレンジしてみてください。
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